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野村総研からの提言

【第4回】PC管理の実態  〜320社アンケートより見えるもの〜  [更新:08/02/06]

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岡崎 誠
株式会社野村総合研究所
主席システムコンサルタント

他社はどうしているのだろうか

前稿では、PCは運用(改善・改革)すべきで、維持管理(進歩なし)ではならないという趣旨のお話をさせていただいた。併せて、10年来変化のないPC管理に関し、あらためてこの時期に再考をすべきだとの意見も開陳させていただいた。

PC管理の再考に当たっては、他社との情報交換や他社の状況をベンチマークしながら自社に最適な姿を描くべきであるとの話もした。

野村総合研究所では2007年10月〜11月にかけて国内企業320社を対象としたPC管理の実態を調査した。前述にもあるように、自社のPC管理の状況と他社との比較は意外とされていない。自社の管理レベルのポジショニングがされないまま、ベンダー戦略に踊らされてしまっているケースも多い。

そこで読者の皆様に今回の調査結果の一部をご紹介する。今の自社のPC管理が他社に比べてどのくらいのポジションにあるのか、その同定の一助にしていただければと思う。

調査方法と調査対象企業のプロフィール

調査方法はアンケートを中心に一部インタビューもさせていただいた。アンケートの質問数は45項目で、PC保有台数から拠点数、コストや管理形態、更新や増設、障害対応、サービスのリードタイムなど多岐に亘る。

調査対象企業のプロフィールは凡そ以下のとおりである。


調査対象者数:国内企業320社

保有PC台数:150〜40,000台

業種:鉱工業、製造、建設、金融、流通小売、サービスその他


保有台数別分布は図1のとおりで、1000台程度のPC保有社数が多いことが分かる。

図1 保有台数別分布

委託状況

図2は委託状況を示したグラフである。PC運用は大きく


(1) 自社運営

(2) 情報子会社委託運営

(3) 外部アウトソーサ運営


の大きく3分類に大別できる。この図は社数ベースでこの3つの委託状況を示したものである。社数的には自社運営が多い。台数規模の少ない企業は自社要員での管理が可能だが、規模が大きくなるに従い、なんらかの形態での委託が増加してくることが見て取れる。

図2 台数別委託状況

PC管理における問題点

PC管理についての問題意識について、「コストが高い」というのが圧倒的である(図3)。このコストはいわゆる委託業者への外部流出コストの分である。管理の範囲や深さもあるので一概に比較はできないが年間一台あたりのPC運用コストとしては一万円後半から二万円中盤が多い。 本コストにはPCのハードウェア、ソフトウェアコストは含まれていない。これらを合わせると、前回でも述べたように、PC運用コストは、IT運用全体の約1/4を占めるまでに至っている。さらにこれにPC管理に関わる自社要員コストも重畳されることになる。

図3 PC管理における問題点

PCの台数規模によって問題点の分布は異なってくる。台数が多い企業ではコストの課題に加え管理の品質やユーザ満足度の問題がクローズアップされてくる。これはPC台数の多い企業はユーザ要求が多岐にわたること、対応する委託業者の力不足などが起因しているものと思われる。、台数規模が少なくなるに従い課題の比重はコストに集約されていく。

図4 台数別問題点

調査から浮かび上がること

まとめてみると、コストについての問題意識が高く、併せて、品質やユーザ満足度などについても課題が多いことが示されている。

委託状況については約半数が自社運営、あとの半数は外部アウトソーサや情報子会社委託といった色分けになっている。ただ自社運営でも台数規模が多くなると足回りの部分(現場での障害対応やPCの入替、移設や回収、キッティングなど)は委託されているケースが多い。

今回の調査では冒頭に述べたようにこれ以外のかなり詳細な内容までをご回答いただき平均像も浮かんできた。

ある一定規模の企業の場合、一部あるいはかなりの部分を情報子会社を含むアウトソーサに委託をしており、その委託費用については


「高い」


また品質やユーザ満足度を上げるための積極的提案や改善指向は


「低調」


PC運用は各社毎にやり方がある、と感じておられ各社毎の


「独自」


の運用を求めているといった像が浮かび上がってきている。

PC運用は宝の山

各社のご回答をながめ、当社のPC管理の経験から常々思うのはPC運用はコスト削減や品質向上の機会がまだまだ沢山残っているということである。そういう意味で、時として筆者は


「PC運用は宝の山である。」


と言っている。


管理コストに関していえば、問題なのはこれらのコストを経営のみならずIT部門も押さえていない場合が多いということである。PC管理に関わるコストが不明なままではどの部分の無駄を取り除き、何を効率化して何を強化すべきなのかの方針すら立たない。

PC一台一台の管理コストは大きくなくても、数によるレバレッジが効くと、それは膨大な額となってしまうのである。逆に言えばアイデアを駆使して一台のPCの管理コストが下がれば、それは台数分に効いてくる。レバレッジ効果を逆に利用できるということでもある。


品質についても改善の機会は探せば相当あるものである。通常品質を上げることとコスト削減とは相反する場合が多いといわれるが、我々の経験からは、品質を上げたらコストが下がるという事実も浮かび上がってきている。


コスト、品質を含め自社のPC管理のレベルを明確にしたいということであれば、コンサルティング会社を使いベンチマーキングを行ったり、本ホームページにある「PC運用診断」をご利用いただいたらいかがか。すでに診断を受けた企業のご担当からは「自分たちがPC管理に関して悩んでいるのと同じことを他社も悩んでいることが分かった」とか、「委託費用が平均に比べかなり高いことがわかった」などの声をいただいている。


また、もしこのような改善の機会を気付いておられながら、そこに取り組まれてない。あるいは取り組む時の労苦が先に立ってしまって動けない。ということであればそれらの障害をどういう手番で突き崩して行くべきかも含め是非ご相談いただければと思う。


※アンケート内容について
本稿では今回のアンケートのなかからごく一部の内容をご紹介した。PC運用に関してベンチマーキングなどのための情報としてもう少し詳しい内容を欲しいというご意向があれば別途ご説明することも可能かと思うので、お問い合わせいただければと思う。
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